訪問看護の急変時評価と対応

近年、自宅療養の需要性が高まり在宅での医療処置の継続が必要な高齢者が増加しており、それに伴い訪問看護の必要性も高まりつつあります。

利用者の体調低下やイベントに伴い緊急の訪問がありますが、訪問時に急変している場合は、どんなに慣れている医療者でも困惑する場面も多くみられます。訪問看護事業所には各事業所にフローチャートやルールが定められていますが、その現場に直面した詳細な対応やマニュアルが少ないのも現実です。今回は、訪問看護での現場目線での急変評価や対応方法についてご説明します。

訪問看護での急変時の判断方法

医療機関で用いるShock Score(SS)や重症スコア(SOFAスコア)等では、迅速な血液データ評価ができない事から、難しい現状にあります。ショックの5Pも判断自体は可能ですが、全体的な背景や疾患評価が難しい事、また訪問看護で働いているスタッフは育ってきた環境が違うため、共有しずらい状況にあります。

最終的にはABCDE評価が簡易的で、報告する側・受ける側も電話上での伝達がスムーズとなります。また対応方法についても明確になります。

ABCDE評価とは

・Airway:気道
・Breathing:呼吸
・Circulation:循環
・Disability of CNS:中枢神経障害
・Exposure and Environmental control:脱衣と外表・体温の頭文字

上記、ABCDE評価を用いて、普段のV/Sと状況がどう違うのかアセスメントする事が必要となります。

急変時に訪問看護師が行う事

1.まずは冷静に

訪問看護は基本単独行動になります。病院のように数秒で他のスタッフが駆けつけてくれたり、コードブルーで一斉要請もできない環境のため、実際に直面した事のない医療者からすると現実味が少ないかもしれません。まず最初に重要な事は現場にいる看護師が冷静でいる事です。兎に角これに尽きます。全体を見渡した後に3秒で良いので利用者を見つめて観察してみましょう。在宅の現場では3秒が原因で命は変わりません。初見の印象は非常に大切です。

2.状態と状況を把握

V/Sを測定し、家族や本人から話を伺い状況を把握します。家族も穏やかでなく混乱した会話内容の時も多いです。そのため看護師は可能な限り冷静になり話の点と点を繋いで状況を整理しましょう。V/S・ABCDE評価・既往の疾患の増悪・新たな疾患の可能性を総合的に判断する事が必要となります。そのためには、フィジカルアセスメント能力が大切です。普段から「問診・視診・触診・打診・聴診」のスキルと「診て聴いて感じる」習慣を身に着けておくことが大切です。分からない時は、分からないと言い切れる決断をする事も時には必要です。その際は速やかに5に移行しましょう。

3.ACP確認

ACPで事前にどこまで医療処置を希望されているかを確認しましょう。DNARを希望していた利用者の家族が突如過ぎて受け入れができずに、医療処置や急遽搬送を希望される場合もあります。ACPは事前に聴取するエンディングノート内容の一部である事を念頭に、必ずしも事前確認通りとは限りません。対応時の医療者が冷静に聴取し、対応する事が大切となります。医療者が最善と思って処置した内容が、本人や家族が望まない形となっても互いに悲しい結果となってしまう事もあります。家族が困惑し判断が迷っている時は、状況と今後の予測を穏やかに説明し、意思決定を仰ぐ事が必要となります。それでも判断が出来ない場合は、速やかに5に移行しましょう。管理者も交えて再確認となります。

4.初期対応

基本は自宅に医療機器や点滴類がない事が多いのでできる医療処置は限られています。仮に可能な場合でも吸引・HOT・補液(自宅に在庫があり指示をもらえた場合)程度となります。血圧が低い場合は、古典的ですが下肢挙上。SATが低い場合は、気道確保や姿勢の工夫、必要時吸引、HOTがある場合は増量の対応となります。もし、現場の看護師が判断に迷ったり、何をして良いのか分からない場合は、速やかに5に移行しましょう。

5.報告・対応共有と外部連絡依頼

緊急訪問時や急変時の状況では、ベテラン看護師でも見落としや状況把握不備が必ず存在します。意外に相談を受けた現場にいない第3者の方が冷静で見落としが見つけられます。どの状況でも電話で相談できる管理者やリーダーと状況を共有する事が非常に大切です。今までのフェーズで判断が難しくこの段階までスキップしてきた場合は、一緒に今までのフェーズを確認する事で現場の看護師も安心して一緒に考え行動する事ができます。報告側も受ける側も共に冷静に現状を理解し合う事が大切です。先程もお伝えした内容のABCDE評価での伝達が状況の把握に関してはスムーズとなります。報告を受けた管理者は他に応援に駆け付けられる看護師を選定して要請しつつ、スケジュールを再編成する事が必要です。

6.自宅対応が可能か判断

在宅での緊急時の初期対応後の判断で必要な事は、今の状態でどの位の生命維持ができる時間があるかの判断となります。自宅看取り方向やフルコース等の明確な方向性が事前に決まっていれば判断は安易ですが、方針が未決定の場合や急変が突如で意思決定者の連絡が取れない場合もあります。今回は、様々な場面や生命予後の状況によっての対応の違いについてお伝えします。

(1)自宅看取りの場合

癌末期や老衰等、余命が少ない事を本人かご家族が事前に理解している場合となります。ご家族に現状を穏やかに伝えて理解してもらう事が大切です。後に家族が怖い思い出になるか、良い最期だった思い出になるか大切な場面です。

・余命予測が数分~当日の場合
穏やかな言葉で冷静に状況を家族にお伝えし、もう短時間で呼吸が止まってしまう事をお伝えする事が大切です。最後の時間となりますので、お別れの時間や意思疎通の時間を作ってあげられるように配慮します。
・余命が数日単位の場合
残りの時間に限りがある事をお伝えし、利用者・家族・親族が心の準備が出来るような対応が必要となります。苦痛緩和を最小限に出来るような処置も必要な時期となります。主治医に状況を報告し、適切な処方や対応方法を指示受けしましょう。

(2)救急搬送が望ましい場合

家族の介護力や介護サービスの充足が難しい事が予測され、本人または家族が病院搬送の希望があった場合や、現状や今後の事を受け止められないと予測される場合は、処置優先とし救急搬送となります。また、主治医の対応や往診が難しい時や、状態悪化の原因が不明瞭の場合、明らかに侵襲的処置や治療が必要な場合もこれらに該当となります。早期治療を行う事で回復も早く、早期退院し日常生活に早期に復帰する事も可能となります。初期対応の後も状態が不安定な場合は、管理者が救急手配が望ましいです。また、救急搬送されるまでに不安定な状態が続く事が予測される場合は、応援スタッフの訪問が望ましいです。

(3)方針が決まっていない場合、自宅治療を希望の場合

・初期対応の後に余命予測が数秒~1時間の場合
V/Sや、ABCDE評価で生命に決定的なサインが出ている在宅での対応は非常に困難となります。往診到着を待ち医療処置を開始するまでの余力はないため、もう呼吸が短時間で止まってしまう事をお伝えし、その上でそのまま自宅看取りか救急搬送を早期に決断してもらいましょう。看取りの場合は自宅看取りの場合と同様となります。搬送希望の場合は、搬送中に息を引き取る可能性もあり、救命できても意識が戻らない可能性や寝たきりになるリスクが非常に高い状況となります。5のフェーズから共有している管理者に救急要請の手配をしてもらい、危機的状況の内容を救急隊の隊長(必ず119に電話した番号に救急隊から折り返しがあります。)と情報共有してもらいましょう。他の外部連絡も管理者に任せて現場にいる看護師は目の前で出来る最大の対応をする事が望ましいです。

・余命予測が数日単位の場合
治療に伴い回復する可能性があります。先ずは主治医に連絡し、往診をお願いしましょう。ACP内容に伴い、点滴治療や酸素投与が開始となる事もあります。医師の判断で医療機関でなければ治療できない、または治らない見込みであれば、その後に救急搬送になる事もあります。また、治らない見込みであっても、最期まで自宅療養を希望される場合もあります。可能であれば往診を同席し追加報告・状況の認識や温度感の共有が望ましいです。

ABCDE評価に対する治療内容の一例として下記を紹介します。往診機関によって指示内容は異なりますのであくまで一例となります。

・Airway:気道
基本不可。希望があれば医療機関が望ましい。在宅でエアウェイ挿入や挿管は基本行わない。緩和的に麻薬対応も検討。
・Breathing:呼吸
 HOT導入、利尿剤、ステロイド。吸入・吸引。事例は少ないがNPPV・NHF。
・Circulation:循環
 補液、利尿剤、事例は少ないが昇圧剤導入
・Disability of CNS:中枢神経障害
 点滴投与(脳神経の点滴物品を持参する医療機関は少ない)、抗てんかん薬
・Exposure and Environmental control:脱衣と外表・体温の頭文字
 保温・クーリング、座薬の使用(体温管理システムは在宅にはない)

ABCDE評価・V/Sの状況と状態低下の要因を見定めて、治療を行っていく事が一般的です。在宅で一般的な対応可能な治療は、医療処置としては補液・抗生剤・HOT投与までとなり、それ以上の医療的処置は往診機関の特徴によって異なります。現状の対応や治療内容で回復が難しい場合は、主治医やケアマネージャーに相談し、医療・介護面の相談を行います。

一時的な急変評価の後は、心不全では、NYHA分類やACC/AHAステージ分類を用いて継続的評価。脳疾患では、NIHSS評価やJCS・GCSスケールを用いて評価。肺炎評価では、A-DROPスコア・CURB-65・PSI(Pneumonia Severity Index)等の該当疾患の評価を用いて継続的モニタリングは可能となります。そこは、事業所や医療機関との共同評価が望ましいところとなります。

緊急度と重症度の対応順位

医療現場には「緊急度」「重症度」違いがあります。利用者にライン類の挿入が多数あったり呼吸器が接続されていると重症=優先という認識を持つ方も多いですが、1番生命のリスクが高いのは状態の不安定な利用者となります。特に利用者の自覚症状と周りで看ている家族が不安と感じるのは、A(Airway:気道)やB(Breathing:呼吸)となります。特に2つが不安定で悪化する速度が速い程、緊急度が高い利用者となります。優先順位は緊急度>重症度となります。

訪問看護での対応可能のライン

一般的な在宅での医療処置の難しい局面はABCDE評価の中ではA(Airway):気道となります。BCDEの領域では、点滴や酸素投与加療で改善できる分野となりますが、侵襲的な処置が必要な場合は医療機関での治療が必要となります。不安定な状態であれば、1日での訪問回数に限りがあるため精密な点滴や頻回な医療処置が難しい局面が多い事も事実です。大切な事はA(Airway:気道)やB(Breathing:呼吸)が悪化する事前兆候の段階で定期的に観察している看護師が発見して早期に治療が開始出来る事であり、早期の段階であれば軽微な治療で改善が可能となります。早期治療する事で、利用者のADL低下を予防しQOLを保つ事も可能となります。途中でもお伝えしましたが、訪問看護師には、フィジカルアセスメント能力が大切です。普段から「問診・視診・触診・打診・聴診」のスキルと「診て聴いて感じる」習慣を身に着けておくことが大切です。これらの総合的アセスメントや日々の対応は、在宅、医療機関での共通する医療職のスキル=日々の努力となります。

まとめ

今回は、訪問看護の急変時評価と対応についてまとめてみました。現場目線で1人で現場にかけつけた時の看護師目線での観察・対応・報告の手順となります。訪問看護は基本1人で訪問となりますが、困った時や緊急時はチームで対応する事が重要となります。そのためには、各事業所で報告経路や応援要請の手順や仕組み作り、そのための雰囲気作りが大切です。デイズ訪問看護リハビリステーションでは、事業所単位で緊急時に必要な速度感で訪問できるようなチーム体制を日頃より行っております。「安心して任せられる訪問看護」を目指して日々取り組んでまいります。