訪問看護の「オンコール」を守る

​訪問看護ステーションにとって、オンコール体制は利用者さんの安心を守る「最後の砦」です。しかし、その裏側には、夜間や休日も呼び出しに備えるスタッフの緊張感と、運営側の丁寧なマネジメントが不可欠です。

​今回は、訪問看護のオンコール体制において「何が大切なのか」、利用者さんとスタッフ双方の視点から紐解いていきます。

​1.利用者側の「つながらない不安」を排除する

​オンコールで最も避けなければならないのは、「電話をかけたのに出てもらえない」「折り返しが来ない」という事態です。利用者さんやご家族にとって、夜間に助けを求めるのは非常に大きな勇気が必要なこと。その信頼を裏切らないことが、何よりも重要です。

​確実な連絡手段の確保: 担当者がすぐに出られない場合に備え、ステーション内でバックアップ体制(セカンドコールへの転送など)を明確にしておくことが不可欠です。

​「つながること」を前提とした運用: スタッフ間の連携を密にし、緊急時に誰がどう動くかのフローチャートを常にアップデートしておきましょう。

​2.「相談していいんだ」と思える関係性の構築

​オンコールの電話は、ご家族からすれば「こんな時間に電話していいのだろうか」という迷いを抱えていることが多いです。この心理的ハードルを下げることも、私たちの大切な仕事です。

​事前のオリエンテーション: 契約時や訪問時に、「どのような時に電話をしてほしいか」「どんな相談が想定されるか」を具体的に伝え、安心感を与えておきましょう。

​否定しない受容的な姿勢: 「こんなこと」とご家族が思うような相談でも、プロの目で「緊急度」を判断することが大切です。「夜分に不安でしたね」と、まずはご家族の心情に寄り添う一言が、後の対応をスムーズにします。

​3.スタッフを守るための「トリアージ」と「精神的ケア」

​オンコールを維持するためには、スタッフが「潰れないこと」が絶対条件です。24時間365日の緊張感は、想像以上に精神的な負担を強います。

​適切なトリアージ: すべての相談を「訪問」で解決しようとせず、電話での助言で解決できることと、緊急訪問が必要なことを冷静に判断するスキルを養うことが重要です。

​休息を担保する仕組み: オンコール明けの勤務調整や、代休の確実な取得は、管理職が強力に推し進めるべきです。「オンコール=疲弊するもの」という文化を根絶し、適切な休憩をとることが結果的に質の高いサービスにつながります。

​4.チームとしての「知見の共有」

​オンコールは、たった一人で背負うものではありません。ステーション全体で「情報を共有」し、誰もが同じ質で対応できる準備が必要です。

ケアの見える化: 電子カルテやチャットツールを使い、利用者さんの最新情報を全スタッフが把握できる環境を整えましょう。「担当者しか知らない」という状況は、オンコールにおける最大のリスクです。翌日、記録を見た他のスタッフが「こうしてほしかったのに・・・、こうした方が正しかった。」という後出し言動は出動したスタッフの今後のオンコールの不安の増強や勤務意欲の低下にも繋がります。情報を共有できるICTを使用し、緊急時も対応できるような情報共有システムを構築しましょう。

​またケース検討会の開催をする事で 過去のオンコール対応を振り返り、「もっと良い対応はあったか」「どう判断すれば迷わなかったか」をプラスの観点で共有する場を定期的に設けることで、組織全体の対応力が底上げされます。

​5.信頼関係こそが最強の安全装置

​訪問看護のオンコールは、機械的な業務ではありません。「顔の見える関係」が構築できていれば、電話一本で解決できることも増えます。利用者さん、ご家族、ケアマネジャー、主治医と良好な関係を築いておくことこそが、緊急時の判断をスムーズにし、結果として過度な出動を減らすことにもつながります。

​6.夜間出動時も頑張れる仕組みや給与体系の構築

オンコールは月の緊急時加算等で一定数料金が発生しているものです。事業所の営業時間外である時まで事業所の利益を求めるような手当支給額は、夜間に出動しているスタッフも報われない状況となります。看護師は「夜勤して当たり前、呼ばれて当たり前、雑務も当たり前」と低い手当てで働いてきた過去があります。それが多くの看護師の離職に繋がってきた事もまた事実です。現場の医療職の視点でも経営側の視点でも長期就労の意欲も維持するため夜間に出動したスタッフには労働に見合った待機手当と出動手当の支給が大切となります。

​まとめ:オンコールは「支えるための架け橋」

​訪問看護のオンコール体制は、単なる労働条件や業務の枠組みを超え、利用者さんの「住み慣れた場所で最期まで生き抜く」という願いを支える架け橋です。

​スタッフが安心して働くことができ、そのスタッフが利用者さんの不安を解消できる。良い循環がうまく回っているステーションが、地域から最も必要とされるステーションです。